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芋洗坂係長

あいかわらず梅雨です。そう簡単には終わりません。でも、梅雨って毎年こんな感じでしたっけ?今日は未明から土砂降り、昼までジトジトしていたのに、午後になるとかんかん照り。湿気と熱気の相乗効果。近頃こんな日が多いように思いますが、みなさん、消耗していませんか?梅雨明けまでもう少し、水分補給を忘れずに、滋養を付けて乗り切りましょう!

Photo さて今回は、ファットな体にキュートな笑顔、切れのあるダンスでお馴染みのこの人

芋洗坂係長のスーツのお話です。

昨春、初めてお会いした係長は、見た目の印象通り、穏やかで優しい気働きの人でした。独特の魅力的なプロポーションと、裏腹のダイナミックなダンスはいずれも修練のたまものですが、身につけた窮屈な背広は、係長のキャラクターを際だたせる最後の一筆です。でも、わざとサイズの小さい既製服は肩や背中を圧迫して、いろんな凝りの原因に。そこで、踊れるスーツのオーダーとあいなりました。

リクエストはきつくて動きやすくて、涼しくて、格好悪くて、昭和の香りのするスーツ。難問です。バラバラです。何故テーラーでなく、私にお話をいただいたのか、納得です。さて何から手をつけようか?

昭和と聞いて、イメージするのは、三丁目の夕日でしょうか?それとも寅さん?あるいはバブル?きっと世代によって違います。でも、サラリーマンがドラマの主役だったのは、やっぱり30年代から40年代。とりあえず、たくさんのDVDを借りてみました。植木等の無責任男シリーズ、森繁久彌の駅前シリーズ、ついでに加山雄三の若大将シリーズ。はちゃめちゃでお定まりのスラップスティックは、なかなかの見物。香港シャツ、ソフト帽、七三わけ、今では見かけなくなった姿がたくさん登場します。でも、肝心のスーツに顕著な特徴は見えてきません。強いて言えば、襟が小さめで、刻みの位置が高いかな?パンツは少し太めで、裾はダブルが今より多い?テーラーの職人さんなら、もっと専門的な指摘もあるのでしょうが、当店は衣装全般を扱うお店、ざくっとした印象だけ取り込むことにします。生地はといえば無地かストライプ、これも今と変わりません。オーダーとは関係ないけど、ひとつ気付いたこと。気障な奴の背広はたいていチェックでサイドベンツ。カジュアルで派手な感じということでしょうか?そのステロタイプがちょっと笑えます。

Photo_2 お次は生地探し。軽くて、涼しくて、そして、“できればダサイ縞模様”が、係長の御希望。紳士服地では見つからず、婦人服の服地やさんにありました。ポーラー織りの薄手のウール。濃紺に白のストライプ。まさに軽くて涼しい、縞模様です。ちょっとダサさに欠けますが。

Photo 最後の難題は、きつくて動きやすい。腕を振り回しても圧迫感のないように、後ろ身頃や首周りは、比較的ゆったりと作ります。でも、前身頃は小さくて、ボタンはわざと閉まりません。あえて、貧弱を意識して、肩幅は小さめに。でも動けるようにアームホールは大きめに。涼しいように裏は背抜きで、裏地も芯地も軽い物を使いました。パンツは太くてちょっと短め。頑固な職人さんなら怒ってしまうような、不条理をなんとかクリアして、めでたくスーツの完成です。

Photo_2 鏡の前で、“ダサーイ”とニコニコ顔の係長。喜んでいただけて何より。でも初めてです、格好悪くて喜んでいただくのって。

このあと新たにお作りしたスーツは、もっときつい感じに、でも動きやすくということで、ポリウレタン混のストレッチ素材を使用しました。格好悪さと動き安さはグレードアップしましたが、今度は暑い。一年の三分の二が夏と言い張る係長にとって、これは大問題。ゴールはまだまだ遠いようです。もっと涼しくて、もっと格好悪くて、もっと動きやすいを目指して、係長のスーツはこれからも進化し続けます。

さて、次回は何にしようかな?お天気と相談です。

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