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ラグジュアリー

ラグジュアリー展に行って来ました。先週末まで東京都現代美術館で開催されていた衣装展です。17世紀から現代にいたるまで、様々な形に贅をこらした衣装100点の展示はさすがに見応えがありました。これでもかと言うぐらいに金糸が施されたローブ、絵画のような繊細な刺繍。何キロもありそうな密集したビーズ。権力と富の象徴として、衣装がどんどん肥大化していく様が印象的でした。18世紀頃、この傾向はもっとも顕著に現れているということですが、やがて滅びる王侯貴族の最後のあだ花だったのでしょうか?長い長いトレーンや巨大化したスカートには、可笑しいような恐ろしいような、朽ちかけたものならではの美しさが満ちていました。なかでも玉虫の装飾には絶句です。18世紀中頃、イギリスのある姉妹のために作られたそのペアドレスには、装飾として、なんと5000匹の玉虫が縫いつけられていました!遠目には楕円形のスパンコールのように見えるのですが、よく見ると確かに虫の羽です。自らは生涯着ることのない贅沢な衣装に玉虫を縫いつけていたお針子さんの気持ちはどんなものだったのでしょうか。悲しいかな、この衣装はデザインのせいか、さほどきらびやかに見えません。あえてねらったのだとしたら、本物の贅沢といえますが。

手に負えないほど大きくなった衣装は、次第に人間本来の形?に近づいていくわけですが、そのシルエットには、イスラム圏やアジアの衣装の影響も入り込んできます。着物も20世紀初頭ヨーロッパのデザイナーに大きなヒントをもたらしたアイテムの一つです。展示には当時の代表的なデザイナー、ポール・ポワレの仮装パーティー用衣装がありました。アラブの伝統的なスタイルを模したこの作品には、仮装でありながら不思議な親近感を覚えました。

ここから先は洗練の時代です。無駄がそぎ落とされ、より美しいシルエットを追い求めて、飽くなき努力が積み重ねられていきます。スキャパレリ、シャネル、ディオール、近代のファッションを作り上げたきら星達の登場です。展示されたドレスには、あふれるほどの創意と工夫が顕現されています。ものづくりを仕事としている身として、今ある技法やデザインは、先人達の大きな遺産であると、つくづく感じました。

ため息が出るほど美しかったのは、ディオールのイヴニングドレス。白いチュールに金糸を使った刺繍が施されているのですが、縦に分割された格子は体のシルエットに沿って大きさを変え、格子の中にはそれぞれの大きさに拡大縮小された花がデザインされています。手刺繍でなければ出来ない仕事です。しかも、格子の形にうまくあうようなカットになっていて、はぎ目が全く見えない作りです。おそらく、こんな仕事の出来るクチュリエはもうどこにも存在しないでしょう。

60年代からはエレガントの概念そのものが変わっていきます。それに伴って贅沢のありかたも変わっていったようです。宝石に変わって、ポップアートがドレスを飾ったりします。ここから先はわりとお馴染みのデザインです。ミニスカート、パンツルック、そしてボディコンシャス、今見るとさほどの感動もありませんが、当時としては、ひとつひとつが、旧社会との戦いの成果だったのかもしれません。80年代、東京にも滑稽なほど肩を張らせたジャケットが闊歩していましたが、考えてみると、あれもひとつの主張でした。男女機会均衡法が施行された当時、女性達が少しでも己の姿を大きく見せようとした現れだったのかも知れません。個人的には不自然なシルエットが大嫌いでしたが。

展示はこの先、ユニークな現代のデザイナーへと続きます。陶器の破片や、瓶のふたをアレンジしたアーティスティックな一点物は、なるほどねえと唸るものもあれば、これはどうよ?と首を捻るものも。発想に価値を見いだす衣装なのだけれど、仕事自体はなんだか雑な感じがしました。おもしろければいいってもんじゃないでしょ。って感じで。個人的な意見ですけど。この先に展示された、川久保玲の作品にも似たような印象を持ちました。発想の転換で出来上がった衣装は、思わぬ効果をあげた素晴らしいものもあれば、奇をてらえばいいってもんじゃないのよ的なものもあって、3分の1は???でした。

今度は今の若手デザイナーの作品を是非見てみたい。これまでの遺産を彼らがどう料理しているのか。あるいはどんな新しい発見をしているのか?全然若手じゃないけれど、私だって進化したい。本当に思うところの多い展覧会でした。

今回は終わってしまった展覧会でしたが、これからも気になるものがあったら出かけていって、ご報告します。できたら開催中に。

追伸。内容と直接関係ないけれど、展示の紹介に添えられていた、シャネルの一言。「贅沢とは貧乏の反対語じゃなくて、下品の反対語なのよ。」格好いい!!同感です。

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